剣尾山 2013/1/4(晴れ時々雪)

【家〜能勢温泉】
友人のT、Sと3人で北摂奥座敷、剣尾山へ行ってきた。Sは昨日に引き続いての連荘登山。Tは昨日19時まで仕事。おまけにSは20時京都発の新幹線で東京に帰らなければならないため、体力的・時間的にシビアな山行となった。朝9時に駅前で集合。自分としてはめずらしく車でのアプローチ。久しぶりの運転かつ知らない道ということもあり、やや緊張気味にロータリー端で彼らを待つ。最初に来たのはSだった。お疲れさんです。つづいてTも到着。Sは助手席。Tは後ろ。慣れないカーナビをセットして登山口にあたる能勢温泉に向けて出発。

中央環状線を使い、国道173号線に入れば、あとは真っ直ぐ北上すればいいだけの簡単なルートだ。しかし、前日確認していたにもかかわらず、173号線に入るために右折すべき交差点を直進してしまった。またしても、Sの人間ナビに助けられ何とか軌道修正。見知らぬ土地を通り抜ける。なぜ、剣尾山なのか? 地理的に実家からそれほど遠くなく、一日で縦走できて、かつ温泉付きという条件で探していたら、たまたま見つけただけに過ぎない。今回の計画を立てるまで全く知らなかった山だ。当たりか外れか。

173号線に入ってからはSの的確なナビの甲斐もあり、順調に進んだ。途中のコンビニで休憩。山に入る前の朝のコンビニは結構好きだ。スイーツ二個とコーヒーを買う。タバコを止めたうえに、乳製品と卵の摂取も控えているというTに悪いなあと思いつつ一服。昨日の疲れが若干残っているが、気分は良い。トンネルをいくつかくぐって、いかにも里山という感じの谷合に位置する能勢温泉の駐車場に到着。なぜかゲートに赤鬼の像が立っていた。車から下りて登山準備。ストレッチで筋を延ばす。雪がチラついている。今日はアイゼン無しだが大丈夫だろうか? 温泉客用の駐車場なので、帰りに外湯を利用することにする。以前はかんぽの宿だったようだが、今は民営となっている。


【行者山〜剣尾山】
駐車場から一旦車道に下りて、今日の縦走路の入口にあたる行者山登山口を目指す。登山口には「おおさか環状自然歩道」の案内板があった。剣尾山を北端に北摂生駒山地〜和泉山地〜和歌山あたりまで大阪府を縁取るように自然歩道を作る計画らしい。ただし、かなり古そうな案内板だったので、その計画が完成したのか、進行中なのか、頓挫したのかはわからない。いつかスルーハイクしてみたいなあ。登り始めは、木の階段が長く続く。二人が先行し、おれは写真を撮りながらついて行く。Sは昨日の山行で痛めた足の調子が戻ったのかな?

10分ほどで、仏画の描かれた巨岩が現れた。行者山という名前からしても、この山域は山岳信仰の対象となっていたようだ。巨岩の先には小さなお堂もあり、初詣も兼ねてお参りをした。結構大きい岩が多い。「ボルダリングに最適やなあ」などと言ってると、実際にボルダリングマットを片付けている最中のクライマーがいた。傍らに高枝切狭のようなものの先にデッキブラシの付いたものがある。「何ですか?」とたずねると、「岩に付いたチョークを落とすものです」とのこと。なかなか配慮が行き届いている。雪が舞うなかのクライミングは冷たいだろうなあ。行者山ピークは登山道脇に標識があるだけだった。ご夫婦のハイカーが休憩されていたので、写真を一枚撮って通過、先行の二人は、会話に夢中で頂上の存在にすら気づいていなさそう。

今回Tはカメラを持たず、マイクに擬似毛を付けたレコーダーを持っていた。なんでも今回の山行を録音するらしい。記録にも色々方法があって良いね。高度が上がるにしたがって、自然林に囲まれた明るい道になった。大人二人が並んで歩けるぐらいの広さがあり快適。これなら子連れでも来れそうだ。炭焼釜跡にTが関心を示す。脊振でもよく見かける。昔は里の人が毎日山に入って薪を拾ったり、炭焼き小屋の番人が炭を作っていたんだろうな。山は燃料補給のためにガンガン利用されていたのだろう。このあたりは赤松が多いようだ。福岡の山ではあまり見ないし、和歌山では松枯れでほとんど失われている。場所が違えば、当然だけど植生も違うものだ。

剣尾山につながる主尾根に上がる直前に、南側に開けた場所があり、そこから海が見えた。よく見ると大阪湾だ。南港やその背後にある生駒・和泉山地もはっきりと見える。海が見えるとは思っていなかったので感動した。海の見える山はいいもんだ。地蔵の並ぶ岩陰で休憩したあと、山頂手前の月峯寺跡で昼食をとることにした。崩れた石灯籠や手水鉢の点在する開けた場所に木製のテーブルと椅子があったので、そこを飯場とした。

小さいテーブルに各々持ち寄った昼飯を並べる。おれはおせちの残りで作った弁当。Sはカップ麺。Tはカップ蕎麦と餅とさんま煮の缶詰。Tがビールの空き缶で自作したアルコールストーブをずらっと並べた。全部で7個。丁寧に加工してある。早速一つにアルコールを入れ、火をつける。初めて見たが、野外ではアルコールの炎はほとんど見えない。手をかざすと手袋の表面が燃えてしまった。湯を沸かすためにクッカーを上に置くが、ゴトクが無いため、クッカーとの間に隙間が出来ず、酸欠で消えてしまう。なかなか実用するのは難しいようだ。Tはあきらめて持参した固形燃料ストーブTEMPOに火をつけた。旅館でよく見る小さな土鍋を暖めるアレを二回りぐらい大きくしたものだ。こちらは実用にたえたらしく、餅を煮ることができた。この作業中、おれはすでに弁当を食い終わっていたので、ひたすら寒さに耐えていた。最後に、Tの持参した一合升で甘酒をいただく。体が温まる。甘酒はありだな。一時間かけて楽しい昼食をとり、荷物をまとめて山頂に出発。10分ほどで剣尾山の山頂に着いた。


【剣尾山〜能勢温泉】
山頂は広く、巨岩が所々に横たわっている。天気も良く、見晴らしも最高だった。記念写真を撮って、巨岩の上から360度見渡す。大阪湾も望めるし、北摂の知らない山々が遠くまで見渡せる。普段の低山ハイクでは考えられない展望AAクラスだ。山頂はそこそこに、次のピークである横尾山に向けて縦走路を進む。潅木がまばらに茂る、明るくて雰囲気の良い道。控えめなクマザサに覆われた北尾根は若干雪嵩があり、雪山ハイク気分が味わえた。マツ、カシ、サルスベリアセビ等々樹種も豊富で飽きない。道幅は狭いが、ちょっとした迷路みたいな感じで好きなタイプのトレイルだ。

反射板のある偽ピークに続く急坂を上がると「摂津 丹波 国界」と刻まれた石柱があった。裏を見ると「明治十二年」とあるのでそれほど古くもないが、往時を偲ばせる渋い石柱だった。偽ピークから西へ10分ほどで横尾山に着いた。北側が開けていて、山々が見渡せる。北西方向に雪を冠した、ひときわ目立つ、格好の良い山群が目に止まった(おそらく御嶽と小金ヶ嶽)。「来年正月はあれに登りたいなあ」などと言いつつ、横尾山を後にした。あとは尾根筋を下りるだけだ。しばらくすると木々が伐採された開けた場所に出た。左手ある鹿避けネットのようなものに沿って尾根を直進する。

MTBのわだちがずっと続いていたが、木の枝を束ねて作られた通せんぼサインを発見。こうしたサインを越えて、今までろくな目にあったことは無い。一瞬間違えたかなと思ったが、先行する二人が「踏跡あるで」と先を行く。たしかにMTBのわだちがあるので、疑問も感じずに二人について行く。普段歩いている無名山の破線コースに比べれば全然ましだが、道がだんだん荒れてくる。Sが立ち止まって地図を確認している。「ちょっとまって、間違えてるんちゃう?」先を行くTを呼び戻す。あたりをよく見ると、下りる予定の尾根が左手後方にある。おかしい。谷は一つしか無いはずだ。曲がるべき分岐を通過してしまったようだ。10分ほど登り返す。先ほどの通せんぼサインの先に、赤い布製のテルテル坊主が木に括りつけられていた。そこを左に下りるのが正解だった。温泉マークの道標一つでもあれば迷うこともないのだが。今回もSの的確なナビで助けられた。単独だと間違わないポイントだろうが(少なくとも地図は見たと思う)、複数だと何となくついて行ってしまうものなんだな。気を付けよう。

雪解けのぬるぬる坂を下り、四角い岩の生える尾根を進む。途中の鉄塔から、先ほど間違えて下りかけた尾根を振り返る。直進していたら全然違う場所に下りて、時間切れになっていただろう。陽が傾くなかペースを上げて下っていく。半ば公園化された温泉上部の丘にある「ひとやすみ峠」で一服。最後の急なつづら折りの道を駆け下りると、温泉施設の裏手に出た。時間が微妙だが、さっと温泉に入ることにした。朝はガラガラだった駐車場も温泉客の車で一杯だ。温泉自体はわりと普通だったが、壊れたロッカーや、ちょっとぬるい屋内風呂と熱すぎる露天風呂のバランスなどが、元かんぽの宿らしさだったのかも知れない。湯冷めしないうちに車に乗り込み、カーナビと人ナビに忠実に従い、二人を下ろす駅に向かった。史跡あり、展望あり、温泉ありの、だれにでもお勧めできる良コースだった。



写真・コースタイムなど
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-258376.html